骨粗鬆症と健康寿命とリエゾンサービスと・・・
ある日、バスに乗っていると、
「私の骨密度、若い人に比べて80%って言われたわ。」
「あら、私なんて70%よ、スカスカよ。」
と笑いながら、
自慢にならない競い合い
が聞こえてきました。
「私、がんで余命1年よ。」
「あら、私なんて脳梗塞で脳にドレーンが刺さっている上に、末期がんを宣告されて余命3か月らしいわ。」
なんて笑う人はまずいません。
命に直結する病気との比較に違和感を覚えられる方も多いと思いますが、
近年骨粗鬆症は、罹患人口1280万人と言われ、
治療をしないと骨折し、要介護や寝たきり、死亡率上昇に直結する、
社会的に問題となる病気になっています。
日本の平均寿命は世界屈指ですが、
一方で健康寿命(平均寿命のうち、介護を要する期間を差し引いた健康な期間)との差は約10年と言われています。
要介護が必要になった3大原因は「脳血管疾患」「認知症」「高齢による衰弱」ですが、骨折・転倒はこれに続き11.8%を占めます。
しかし関節疾患など骨の病気の合計は25%に達し、全疾患で1位です。
健康寿命を延ばすのは、超高齢化社会の日本の課題であることは言うまでもありませんが、骨の病気を無視しながら、健康寿命を延ばすことはできません。
一方で、90歳女性の平均余命(90歳~平均何年生きるか?)は5年以上です。
平均寿命を超えたから余命は0年・・・
ではありません!!
もう90だし今後は自然な老後を・・・
と思わず口にしそうですが、平均5年生き、かつ終末期は平均10年要介護状態であることを重ねて考えると悠長なことは言えません。
要介護、寝たきりは隣り合わせであり、健康な90歳であれば、骨の管理にも気を配りたいところです。
骨粗鬆症を検診に組み入れている自治体は少なく、深刻な現状はまだ浸透していません。
大腿骨の付け根の骨折は、世界的に減少傾向にある中、日本は例外的に増えています。
一度骨折すると統計的に骨折を繰り返しますが(ドミノ骨折という言葉があります)、
薬物治療を開始しても、1年で半数が治療継続できていません。
椎体骨折(背骨の圧迫骨折)は、折れても
おや、何?
くらいの違和感で、半数以上は痛くもかゆくもない(いつのまにか骨折)と言われており、検査で初めて発覚することがあります。
骨折の自覚が生まれず、指摘されても、危機意識も生まれず、深刻な骨折につながるハイリスクであるだけに事態を深刻化させる要因と言われています。
骨粗鬆症の理解を浸透させ、治療を管理し、骨折を減らそうと骨粗鬆症リエゾンサービスが始まっています。
リエゾンとは「つなぎ役」「連絡係」を意味し、多職種連携で集学的に取り組む医療サービスです。
近年、骨粗鬆症学会より骨粗鬆症マネージャーの資格が創設され、全国の医療機関で活躍しています。
日本には「カルシウムを摂っているから大丈夫」といったカルシウム信仰がまだ残っています。
世界的にも骨粗鬆症は骨の強度に問題が生じた病気であり、生活の見直しだけでは改善しません。
検診で骨粗鬆症を指摘された、骨粗鬆症に不安がある方は、リエゾンサービスに取り組んでいる整形外科などを受診し、将来の骨の健康について相談しましょう。