コツソの部屋

骨粗鬆症マネージャーとして病院勤務しております。骨折を防ぐための生活習慣や、治療薬、サプリメント、食べ物などについて情報発信していきたいと思います。宜しくお願いします。

信じる者は救われる?プラゼボ(プラシーボ)効果の誤解

●こどものクスリはおまじない?



くすり


だいぶ前だが、外来小児科学会に参加した時に、

子どもの安全についてのワークショップの中で、



『子どもを安全に育てたいなら、刑務所に入れるべきだ』



なんて格言が紹介されてました、フランスかどこかの哲学者の言葉らしいです。

何とも皮肉ってますね。

調べてもわからないので本当かどうかわかりませんが、

友達と喧嘩してケガする・・・

危険な昆虫をわしづかみする・・・

自分の散らかしたおもちゃで滑って自爆する・・・

犬を見て興味全開でワンワン!!と連呼して威嚇されたと勘違いした犬にほえられる・・・



などなど、日常には危険が危ない!!



こういった不安を解消するには、24時間監視で監禁と言うのもなるほどと思います。



わが家は共働きで、お互い家事も一通りこなすので、

四六時中子どもを監視できません。

家事してるときは、目を離さないようにしてますが、

見えないところにも行きますし、見えてても何するかわかりません。



先日も、見えないところに行って、

「ゴウッ」

という派手にぶつけた音が家中に響きます。

何事かと思い見に行こうとすると、娘が自ら寄ってきて、

「タンポリててゴンちたわ!!」(訳:トランポリンしてたらバランス崩して壁に頭ぶつけたわ)

と訴えます。

「いちゃいのとんぢぇけして!!」(訳:いたいのいたいのとんでけーをして)

というので「痛いの痛いのとんでけー」をして、

どう?と聞くと

「なーった!!」(訳:治ったわ)

と、もうお前に用はないよというようにそそくさと遊びに戻ります。

どんな薬より、子どもには



治療が治った!!



を実感するようですね。

治るわけないんですけど・・・





プラセボ効果





医療業界では偽薬効果(ぎやくこうか)、プラシーボ効果とも呼ばれます。

偽薬を処方しても、薬だと信じ込む事によって何らかの改善がみられることがあります。

主に臨床検査データなどの客観評価ではなく、

痛み、不眠といった自覚症状に使われることが多いです。

語源はラテン語のプラケーボーに由来します。

訳すると「喜ばせる」という意味ですが、日本では「偽薬」と訳されます。

不眠の訴えの強い患者に「メリケンコ」のようなものを飲ませることもありました。

以外とよく効くのでびっくりです。

ただ、薬以外でも、痛みを訴える患者に指を肛門に入れる「指サポ」もありました。

鎮痛剤の坐薬を入れたように見せかける、プラセボ効果ですね。

以前働いてた病院で、無知な私がカルテの「指サポ」という文字を見て、看護師さんに

「指サポって何すか?」

と聞くと、ファックのゼスチャーで

「あんたも肛門に刺したろか?」

と勤務したての新人にありえない威嚇をされました。



そんなことされたら苦痛が苦しい!!



プラセボ手術というのも聞いたことがあります。

本物の薬の治療効果を明らかにするため、比較対照試験で利用されますが、

実際の臨床では、倫理的な批判もあるため、以前ほど使われなくなっている印象です。

臨床試験でも類似薬効薬、非劣勢試験の結果を見るようになりました。

ニセ薬による思い込みは、治療にするのはダマシにあたるということですね。





●医薬品でもプラセボ効果と有意差がないものも・・・





アセトアミノフェンは小児や高齢者に広く使われる解熱鎮痛剤として有名です。

各国の腰痛治療ガイドラインでも第一選択薬となっていますが、

急性腰痛に対するアセトアミノフェン投与はプラセボ薬と比較して、

回復に要する日数、痛みの程度、腰部の機能、睡眠の質やQOLの改善

において同等であるとの研究報告が発表されました。



おんなじと一緒ですね。



急性腰痛に対する検証を目的とした二重盲検試験です。

期間は2009年11月から2013年5月、

施設はシドニーの235施設で行われ、急性腰痛患者を以下の

・ 第1群(550例):アセトアミノフェンを日に3度服用(1日当たり最大3,990mgまで)

・ 第2群(549例):アセトアミノフェンを痛みが出た際に頓服(1日当たり最大4,000mgまで)

・ 第3群(553例):プラセボを服用治療期間は腰痛が回復するまでまたは4週間

の3群に分けて評価した結果、回復までの日数は、第1群で17日、第2群で17日、第3群で16日となり、

各群の間に差は無く、急性の腰痛に効果に差がないと示唆されました。

Efficacy of paracetamol for acute low-back pain: a double-blind, randomised controlled trial

急性腰痛へのパラセタモール(アセトアミノフェン)の有効性:二重盲検ランダム化比較試験

掲載:専門誌「ランセット(The Lancet)」オンライン速報版、7月24日付

報告:豪シドニー大学 ジョージ国際保健研究所のクリストファー・ウィリアムス博士ら





プラセボには薬がある?





『プラセプラス』という商品があります。

プラセボ製薬が販売する本物の偽薬・・・

これはキャッチコピーでしょうか。

本物の偽物・・・

厳密に言うと薬ではなく、作ってる会社も製薬会社とは言えませんが、

偽薬のニーズは多いようです。

偽薬・・・と聞くとマイナスイメージが強いですね。

自分が飲まされるとしたらあまり気分がいいもんでもありません。

でも、『眠剤漬け』や『鎮痛剤中毒』なんて言葉も耳にします。

そんな時、本人にとってはだましとはいえ、

症状が改善し、健康に害がなく、薬漬けにもならない。

そんな薬にもなるプラセボは、その患者さんを見守る人や家族にとって



感謝がうれしいのかもしれません。



偽薬はイ(ヒト)の為(タメ)の薬(クスリ)であり、

プラセボの由来は『喜ばせる』という意味なのだから・・・